2 見直しに当たっての問題点等
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今後、政局はどのように動いていくのか分かりませんが、昨今の厳し
い財政事情や、少子高齢化の進展に伴う社会保障財源の確保の必要性などを踏まえまして、また、民主党のみならず、自由民主党を始めとするいくつかの党が、消費税の見直しは避けて通ることのできない検討課題であるとしていることからみましても、近い将来、消費税の見直しに向けての具体的な検討が開始されるものと思われます。
消費税の見直しに当たって、税率を何時から何%にするかは政治判断
の問題ですが、税率引上げが行われる際には、消費税に内在する逆進性を緩和するため、食料品などは一般的な税率よりは低い税率(軽減税率)とするか、税率は単一としつつ給付付き税額控除制度を設けるか、という問題があります。
この逆進性緩和対策には、いろいろの問題を含んでいますので、要点
を説明させていただきます。
(1) 消費税の逆進性
消費税は、消費支出に対して一定の税率で課税しますので、消費支出に対しては比例的な負担となります。
しかし、所得を基準にして消費税の負担を考えますと、所得の低い方は、貯蓄に回すゆとりがないため、所得と消費支出は近い金額になるのに対し、所得の多い方はかなりの部分を貯蓄や投資に回すゆとりがあるため 所得に対する消費支出の割合は小さくなります。このことから、所得に対する消費税の負担割合を見ますと、低所得者ほど負担率が高くなる問題があります。これを消費税の逆進性と言っているのですが、この逆進性を緩和するために、消費税を導入している多くの国で、軽減税率制度を設けたり、給付付き税額控除制度を設けています。
(2) 軽減税率制度
食料品など生活に密着した物やサービスを低い税率とする制度で、これにより低所得者の消費税負担を少しでも軽くしようとするものです。
この軽減税率制度は、ヨーロッパ諸国で広く採用されており、一般的に、食料品、水道水、新聞・雑誌・書籍、医薬品、旅客輸送等がこの対象にされています。
しかし、この取扱いは、資料資料「主要国の付加価値税の軽減税率の概要」にあるように国によりかなり異なっていますし、軽減税率を設けていない国も多くあります。
さらに、食料品を軽減税率の対象としている国でも、軽減税率の対象になる食料品の範囲は異なっています。例えば、レストランなどの飲食店での飲食は、次のような扱いをしています。
○ フランス
飲食店内での飲食も外に持ち出しての飲食(テイクアウト)も、軽減税率の対象
○ ドイツ
飲食店内の飲食は標準税率、テイクアウトは軽減税率の対象
○ イギリス
飲食店内の飲食は標準税率、テイクアウトは軽減税率の対象
ただし、温かい食品のテイクアウトは標準税率の対象
この軽減税率制度には、一般に次のような問題があると指摘されています。
@  何が生活に密着した物やサービスなのかを合理的に選定するのが難しい。かっての物品税時代に、何が贅沢品かを選定するのが難しく、多くの批判があったのと同じような問題が生じる。
A 制度上は@の選定ができても、それに該当するかどうかを判断するのは実務上大変で、その判断をめぐって税務当局とトラブルを引き起こす種となる。
B 事業者が仕入税額控除を的確に行うために、事業者間の取引については、納品書、仕切書や領収書などの取引関係書類に、取引に際して適用された税率と税額を明示する制度(税額別記のインボイス制度)が必要となり、事業者の事務負担が増えることになる。
C Bの税額別記のインボイスは、課税事業者のみが発行でき、免税事業者は発行できないことから、免税事業者からの仕入れは仕入税額の控除ができないため不利となるので、免税事業者は取引から排除されるおそれがある。
 また、課税事業者は、税務署に登録し課税事業者番号をもらい、インボイスに明記することが必要となる。
D 軽減税率を設けると、その範囲にもよるが、その分税収が少なくなるので、一定の税収を確保しようとすると、標準税率を高くせざるを得ないことになる。
つずき
4 まとめ
今後、消費税の見直しについての検討審議が本格化してきますと、この逆進性の緩和策のあり方が議論の中心になってくると思われますので、間税会もこの点についてさらに調査研究し、税制当局に提言するとともに、世に広く軽減税率制度と給付付き税額控除制度の内容と利害得失を知っていただくための啓発活動に取り組み、国民の皆様に的確な判断・選択をしていただくための資料・情報を提供するよう努めてまいりたいと思います。
続き
続く
(3) 給付付き税額控除制度
所得税における給付付き税額控除制度は、所得税における各種の控除を所得控除ではなく税額控除とし、算出された所得税額からその控除対象税額を控除し、控除できない場合には給付するという制度です。
例えば、現在の基礎控除の金額は38万円で、その金額をその者の所得金額から控除することとされています。このような所得控除では、所得税率5%が適用される者の控除税額は1.9万円、10%の者は3.8万円、20%の者は7.6万円となるなど、所得金額が高い者ほど控除税額が多くなります。また、所得税額がない者には、何の効果もないことになります。
この所得控除を税額控除に切り替え、例えば基礎控除は3万円の税額控除とし、その者の算出税額からその金額を控除し、控除できない者に対しては給付するというのが、給付付き税額控除制度です。
この制度によりますと、例えば、所得税の算出税額が5万円の者の納税額は2万円(5−3万円)になり、算出税額が2万円の者には1万円(2−3万円)の給付が行われることになり、算出所得税額がない者に対しては3万円が給付されることになります。
この所得税における給付付き税額控除制度の対象に、消費税の逆進性緩和のための措置を採り入れようするものであり、カナダなどで設けられています。
カナダ(消費税の税率は、日本と同じ5%)の制度は、消費税の税額控除額を大人一人につき2万円、子供一人につき1.5万円(金額は、いずれも仕組みを分かり易く説明するための概数です。以下同じ。)と決め、夫婦のみの家庭に対しては4万円(2万円×2)の税額控除(給付)、夫婦子供2人の家庭に対しては7万円((2万円×2)+(1.5万円×2))の税額控除(給付)をするものです。
例えば、夫婦子供2人の家庭の算出所得税額が10万円であるとするならば、所得税の納付額は3万円(10−7万円)となり、算出所得税額が3万円の場合は4万円(3−7万円=△4万円)の給付、算出所得税額が0の場合は7万円が給付されるというものです。
この制度は、低所得者の消費税負担を緩和しようとするものですから、一定以上の所得のある者には適用されません。カナダでは、所得額が300万円以下の家庭には全額が控除(給付)されますが、300万円を超えると控除額は低減して行き、400万円を超えると給付は受けられないという仕組みになっています。
この制度の下では、消費税の税率は単一税率となりますので、(2)の軽減税率制度のような問題は生じませんが、高額所得者が給付を受けることがないようにするため、各人の所得額(世帯単位で適用することになりますので、世帯全体の所得額)をきちんと把握する必要から、納税者ごとに番号を付ける納税者番号制度のような制度を設けることが必要になります。
3 間税会の対応
間税会は、消費税の税率引上げに賛同し、その推進を図る団体ではありませんが、消費税の見直しが避けて通れないとした場合に、消費税の制度が国民の皆様に理解され、支持が得られるような制度であってほしいとの思いから、今後における消費税のあり方等について調査研究をし、税制当局に提言活動をしてきているところです。
全間連の平成23年度の税制改正に関する提言書は、去る7月に税制委員会で検討審議した結果を踏まえて常任理事会で取りまとめ、昨年秋に税制当局に提出しました。
この提言書については、昨年9月に各間税会に送付し、9月15日発行の全間連会報第119号に登載してありますが、消費税の逆進性の緩和策については、次のように言っています。
○ 単一税率の維持と給付付き税額控除制度の創設
(要旨) 消費税は、税率の引上げが避けて通れない場合においても、単一税率を維持し、低所得者に対する配慮(逆進性の緩和措置)は、軽減税率制度ではなく、所得税において給付付き税額控除制度を設け、その対象にすることにより対処することを検討すべきである。
○ 納税者番号制度の導入
(要旨)納税者番号制度の導入を検討されたい。
(理由)納税者の利便の向上と課税の適正化を推進するために、プラ
イバシーの保護に配意しつつ、諸外国の実施例を参考にして、納税
者番号制度を創設する必要がある。
当連合会は、消費税の税率の引上げが行われる際には、低所得者
の消費税負担を緩和するため、所得税において給付付き税額控除制
度を設けるとともに、消費税をその対象にするよう要請しているが、
給付付き税額控除制度を的確に運営するためには、納税者番号制度は
不可欠なので、そのためにも納税者番号制度の導入を検討されたい。


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